■序章(はじめに)

正直に言ってしまえば、私は人に自分のことを語るのが苦手だ。いや、苦手どころか、本来は極端な秘密主義で、胸の内を明かすくらいなら黙っていたほうが楽だと思うタイプだ。気がつけば人生50年が目前だが、内側に閉じ込めてきた感情や記憶は、あの頃のまま十代に置き去りになっている。年齢だけが勝手に積み重なり、経験値は少なく、心だけが時間に取り残された。 振り返れば、私は怠け者で無気力で、大事な局面ほど逃げてばかりだった。周囲の人が当たり前にできていることに躓き、後になってから「あの時こうすればよかった」と気付く。そんな後悔の断片ばかりが人生の棚には溜まっている。胸を張って語れる経歴も成果もない。情けない、と何度も思った。 ただ、それでも――こんな人生だからこそ、もしかしたら悩んでいる誰かの参考や励みになれるのではないか。そんな気持ちが、今こうして自伝的なブログを書き始めるきっかけとなった。 世の中には成功談や華やかな逆転劇が溢れている。一方で、私の人生はそのどれにも当てはまらない。「こんな情けない人生もあるんだ」と、読み手に優越感を与えてしまっても構わない。もし、あなたが苦しみの中にいるならば、「自分よりひどい人間もいるんだ」と少しでも楽になってくれたら、それで十分だ。あるいは、私の失敗があなたの反面教師になり、人生のどこかで役に立つのなら、それほど嬉しいことはない。 昔から、自分の過去を語ることには抵抗があった。発信できるような人生ではないし、それは今でも思うことだ。けれど、このまま心の中で全て眠らせるより少しだけでも発散することによって何が得られるか感じたくなった。思い返せば、私の人生は小さな出来事がいくつも積み重なり、その度に右へ左へ流されてきた。ほんの些細な出会いや経験が、人間をどう形づくるのか――その記録を残すことに意味があるのかもしれない。 というわけで、ここからは私の幼児期から話を始めようと思う。 なぜこんな人格になったのか、なぜこんなに不器用な生き方しかできなかったのか。それらの答えを探す旅は、幼児期からの、あの小さな日常から始まっている。年齢を問わず、どこかでつまずいた人たちと励まし合い、人生を変えるきっかけになれたらと思う。そして、この場所が私自身の立ち直りの足場にもなれば嬉しい。もちろん、私はまだ人生を諦めてはいない。ここからどう変わっていくのか、その過程も正直に伝え、良い報告もできるようにこのブログの歩みを進めたい。各時代の自分史を語りながら、テーマ別の記事を予定している。

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