読者の皆様の初恋はいつでしょうか?
また、何をもって初恋と呼ぶのか?
その初恋に対してどれくらい語れますか?
私の初恋は、おそらく小学1年生だと思う。
それが早熟なのか普通なのかは分からない。ただ、恋することがまだ恥ずかしかった年齢ではある。
彼女は整った顔立ちで同じクラスでもひときわ目立つ存在だった。
私との日常生活での会話は多くなかったはずなのに、なぜか大事な場面では彼女が近くにいた記憶がある。
ある日、私が隣の席の女子のお下げ髪を、ふざけた勢いではずしてしまい、泣かしてしまったことがあった。クラス全員を一瞬で敵に回してしまった雰囲気で、どうして良いか分からず立ち尽くすしかなかった私のところへ、彼女は静かに近寄ってきて、迷いのない手つきで髪を整えてくれた。その時に私は彼女の母性を感じ、その落ち着きと所作は、小学1年生とは思えないほど大人びていた。
本来なら「ありがとう」と一言でも伝えるべきだったのだろう。だが当時の私はただ呆然と彼女の横顔を見つめるしかなく、胸の奥が熱くなるような、恥ずかしいような、不思議な感情だけが残った。
彼女は運動神経も抜群で、特に足の速さは群を抜いていた。運動会では学年新記録を更新し、歓声を浴びても恥ずかしがる様子ひとつ見せない。学業の成績までは分からないが、活発で、男子とも自然に笑い合い、誰もが認める “クラスの看板” のような存在だった。女子の代表と言えば、迷いなく彼女が選ばれる──そんな空気が当たり前にあった。
私は現在もそうだが、あまり目立つ女性を好きにならないし、近寄りがたく、親近感をあまり持たない。彼女のように完成された眩しいマドンナではなく、どこか不器用で、まだ光りきっていない“原石”のような子に心惹かれる傾向が、その頃からすでにあったように思う。であるから、当初はあまり恋心はなく、むしろ苦手なタイプだったと思う。あまり自分から話した記憶がないし、それだけにきっと複雑な気持ちを感じていたはずだ。
彼女との距離が縮まったのは、ただ「共演」したという事実があったからだ。学芸会、そして学校紹介のテレビ番組──いずれも私と彼女は“ペア”として名前を並べた。
内気な私は、本心は逃げ出したいくらいで、与えられた役割をこなすことで精いっぱい。隣に立つ彼女のきらめきと比べ、自分は担任に抜擢されたからこそ立っている“メッキの輝き”に過ぎないことを、本能的に悟っていた気がする。~後編へ続く~
© 2025 bikke All Rights Reserved.
無断転載・全文コピーを禁じます。引用は出典の明記により可。

コメント